今回はスギ花粉症(アレルギー性鼻炎)の治療薬について書かせていただきます。
1. ケミカルメディエーター遊離抑制薬
インタール®、リザベン®、ソルファ®、アレギサール®、ペミラストン®などこれらの薬剤の特徴は、
- 連用により改善率が上昇する。
- 効果はマイルドなため、臨床効果発言が遅い。
- 鼻閉にもやや効果がある。
- 副作用が比較的すくない。
- 眠気がない。
です。以前はよく使用されていましたが、効果がマイルドなためか現在はほとんど使用されていないのが現状です。
2. ケミカルメディエーター受容体拮抗薬
(1) 抗ヒスタミン薬
第一世代抗ヒスタミン薬
ポララミン®、タベジール®など
1940年代からアレルギー治療薬として用いられ、市販の鼻炎用薬剤にも用いられています。くしゃみ、鼻水には効果がありますが、鼻づまりに対する効果は十分ではありません。副作用として眠気、胃腸障害、口の渇き、めまい、頭痛などがあり、車を運転する人、危険な作業をする人には注意して投与します。抗コリン作用が強いため、緑内障、前立腺肥大、喘息の患者様には基本的に使用できません。
第二世代抗ヒスタミン薬
タリオン®、アレグラ®、クラリチン®、ザイザル®、アレジオン®、ディレグラ®、ザジテン®、アゼプチン®、セルテクト®、ゼスラン®、ニポラジン®、ダレン®、レミカット®、エバステル®、ジルテック®、アレロック®、リボスチン点鼻など
現在もっとも使用されている薬です。第二世代の抗ヒスタミン薬は抗ヒスタミン作用だけでなく、多彩な抗アレルギー作用があります。また第一世代抗ヒスタミン薬と比較して
- 眠気、口の渇きなどの副作用が少ない。
- 鼻症状の改善度がよりよい。
- 鼻閉に対する効果もややよい。
- 効果が出るまではやや遅いが、持続が長い。
- 続けて服用することで効果があがる。
など副作用が少なく高い効果の得られる薬です。
※ディレグラ:アレグラとプソイドエフェドリンの合剤で鼻づまりに効果があります。
(2) 抗ロイコトリエン薬
オノン®、シングレア®、キプレス®など
主に鼻づまりに効果を発揮しますが、鼻水、くしゃみにも効果があります。気管支喘息の治療薬でもあります。効果が出るまでにやや時間がかかりますが、眠気の副作用もなく使用しやすい薬です。
(3) 鼻噴霧ステロイド薬
ナゾネックス®点鼻、アラミスト®点鼻、エリザス®点鼻など
局所(鼻粘膜)の効果が強く、吸収されにくく、分解も早いため、全身的な副作用は少なく、効果は確実です。最近の点鼻薬は1日1回でよく、くしゃみ、鼻水、鼻づまりのすべてに効果があるため、お勧めしたい薬剤の一つです。
(4) 全身ステロイド薬
セレスタミン®、プレドニン®など
鼻噴霧ステロイド薬では症状の改善しない重症の花粉症(アレルギー性鼻炎)に対して内服治療を行います。ステロイドの内服は副作用(重症感染症、骨がもろくなる、胃潰瘍の可能性、皮膚障害、月経異常など)を伴いますので、短期間の使用にとどめるべきと考えます。
(5) 点鼻用血管収縮薬
コールタイジン®点鼻、トラマゾリン®点鼻、トーク®点鼻など
使用により鼻づまりは一時的ですが速やかに改善します。しかし連続使用により効果が弱くなったり、逆に鼻粘膜が腫れて鼻づまりがひどくなったりします。(薬剤性鼻炎)使用は鼻づまりの症状がひどい場合に限ったほうがよいと考えます。
(6) 漢方薬
小青竜湯®など
効果はやや弱いですが、眠気の副作用はありません。短期間でしたら妊婦の方にもお勧めできます。
当院では以上の薬剤を患者様の症状に合わせて、もっとも効果が高いと思われる組み合わせで処方いたします。お気軽にご相談ください。
花粉症(アレルギー性鼻炎)に対する注射について
(1) 長期作用型ステロイドの筋肉注射
ケナコルト®など
全身ステロイド薬の項で述べたステロイドの副作用の観点からお勧めいたしません。(基本的に鼻アレルギー診療ガイドラインでも使用は望ましくないとされています。)1回の筋肉注射で効果は3週間程度持続するといわれています。(当院では行っておりません)
(2) 非特異的変調療法
ヒスタグロブリン®など
アレルギー体質を改善する薬剤ですが、血液製剤ですので、未知のウイルス感染の可能性など慎重な使用が求められます。(当院では行っておりません)
(3) 生物製剤
ノイロトロピン®など
どういった作用でアレルギーを改善しているかは不明で、即効性もありません。(当院では行っておりません)